読み合いに囲碁ファン熱視線 碁聖戦、仙台で大盤解説会 |
【2021年7月13日(火) 河北新報(河北新報囲碁記者 田中章)】 仙台市で打たれた第46期碁聖戦5番勝負(河北新報社など主催)の第2局は、黒番の一力遼碁聖(24)=仙台市出身=が井山裕太三冠(32)を下し、古里で防衛戦初勝利を飾った。対局を盛り上げようと市内2カ所で開かれた大盤解説会では、囲碁ファンが固唾(かたず)をのみながら激しい攻防を見守った。対局場となった太白区秋保町のホテル佐勘での大盤解説会には、囲碁ファンら約70人が参加。蘇耀国九段が初手から順に両対局者の工夫を分かりやすくひもとき、他の複数の候補手も紹介した。立会人の趙治勲名誉名人も登壇し、一見気付きにくい井山三冠の58手目を説明。「『バーン』と心に響くような手だった。他にも悪くない選択肢はあったが、一力碁聖も相手に響くような手を返した」と対局者の心情を代弁した。サテライト会場となった青葉区の複合施設「クロスBプラス」では平田智也七段が解説。井山三冠を一時優勢とみていた人工知能(AI)に「一力碁聖はAIの評価値1%から逆転したことがある。まだまだ勝負は分からない」と語った。一力碁聖が入念な準備工作の末に95手目で孤立していた白一団の急所を突くと、検討室で見ていた棋士らから「来たか」との声が上がった。手数が進み、蘇九段が「黒の優勢」と話すと大盤解説の会場がどよめいた。青葉区の会社員三品広さん(72)は「非常に見応えのある読み合いが展開され、まさに頂上決戦だった」と感嘆した。宮城で初めて七大タイトルの挑戦手合に臨んだ一力碁聖。「何とか結果を出せて、ほっとしている」。地元の声援に勝利で応え、初防衛に大きな弾みがついた。
■攻め奏功、一力碁聖差し切る 急戦になりやすいといわれる黒のタスキがけ布石でスタートした。だが、序盤は黒が右下と左上、白が右上と左下で互いに地を取る穏やかな進行となる。右下でシチョウに抱えられた黒石の逃げ出しを見ながら中央で競り合いが始まる。一力碁聖が黒61のシチョウアタリを打って仕掛け、中央の白石を分断する。黒が攻め、白のシノギの勝負どころを迎える。難解な戦いで互いに時間を使い、壮絶な読み合いとなる。思考力の限界が試される局面が続く。白は手順を尽くして生きたが、その間に黒は下辺や中央に地をまとめ優勢になる。ヨセに入って黒のリードは変わらず、そのまま押し切った。難しい戦いの場面で一力碁聖の読みの深さと正確さが発揮され、この碁の勝因となった。
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