若手棋士が奮闘! 囲碁ファンを楽しませたU-20の国際棋戦 |
【2021年9月10日(金) NHKテキストビュー『NHK囲碁講座』2021年9月号より(文/松村和明)】 20歳未満の若手による国際棋戦「第8回グロービス杯世界囲碁U‐20」が6月の5、6日に開催された。日本からは予選を勝ち抜いた6名の棋士が出場。インターネット対局を介して世界中の代表選手たちと熱戦を繰り広げた。応援に駆けつけた平田智也七段は「中国や韓国はとても強いですが日本もレベルが上がっていると思います。気持ちで負けないように頑張ってほしい」と語った。今回は大会に出場した勢いのある若手棋士たちに注目してみよう。
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今大会、優勝は中国の王星昊六段に譲ることとなった。だが、グループリーグで上野愛咲美四段(19歳/出場3回)が韓国に勝ち星を挙げて伊 了二段(19歳/初出場)、大竹優五段(19歳/出場2回)と共に本戦入りするなど、日本の若手棋士の奮闘は目覚ましいものだった。将来、成長した彼らが世界戦で輝くのは間違いないだろう。その日が待ち遠しくてしかたがない。グロービス杯には大会後の催しとして出場棋士たちの自戦解説がある。今回は動画配信という全国の囲碁ファンが楽しめる形で行われた。記者が特に注目したのは福岡航太朗二段(15歳/初出場)の解説だ。福岡二段は昨年の優勝者であるムン ミンジョン四段との対局を解説。優勢になるチャンスがあり手応えも感じているようだ。あらかじめ解説する対局の要所を決めていて、話し方や内容も簡潔でとても分かりやすい。アマチュアにとって分かりづらい高度な着手の意図も、理由を付けて話を進めてくれるので納得しやすい。今後、彼は勝負師としてだけでなく解説者や指導者としても活躍するのではないかと期待している。また、大会の応援に駆けつけてくれた大西竜平七段も聞き手として解説に加わり、親しみやすい雰囲気でフォローしていたのはさすがだ。本誌で講師を務めた上野愛咲美四段は解説する棋譜を「1局に絞れなかった!」ということで急きょ2局も解説することに。特にクム ジウ三段との1局目は、ふだんから棋譜を見て注目していた相手だったらしく、終始楽しそうに解説をしていた。彼女の碁はハンマーパンチの異名どおりに激しい戦いの碁だが、聞き手をした広瀬優一五段(19歳/出場3回)のアシストもあり、複雑な進行も分かりやすくまとまった。他の棋士たちも持ち味を全開にした若手らしい自由で楽しい雰囲気の解説だった。皆、激戦を戦い抜いたあとにもかかわらず、配信の予定時間を過ぎるほどに熱く語り尽くしてくれた。囲碁ファンを最後まで精いっぱい楽しませてくれた彼らをこれからもっと注目していきたい。
※テキストでは選手のコメントを紹介しています。 ※段位・タイトルはテキスト発売当時のものです。
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