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最後の挑戦に開き直り 外柳是聞三段が囲碁新人王戦優勝
【2021年10月15日(金) 産経新聞
小林光一、高尾紳路、山下敬吾、張栩(ちょう・う)に井山裕太、一力遼、許家元(きょ・かげん)、芝野虎丸…。歴代の優勝者の多くがのちに七大タイトルを獲得している若手棋士の登竜門、第46期新人王戦決勝三番勝負を外柳是聞(そとやなぎ・せぶん)三段(26)が2勝1敗で制し、最後のチャンス≠射止めた。「ビックリというか不思議な感じ。第2局でまずく打ってしまったので、きょうは開き直って思いきりいこうと。それが良かったのかもしれません」。前年の予選開始時に25歳以下であることが条件のため、参加できるのは今回が最後。加えて相手は女性で初の優勝がかかった上野愛咲美(あさみ)女流棋聖(19)。「パワーがすごいので、開幕前は厳しい戦いになるかなと。ただ第1局で勝つことができ、ひょっとすると通用するかも、と」とシリーズを振り返った。プロ棋士を目指し中学2年のとき、盛岡市から上京、故高林拓二七段の内弟子となった。年代が近い許家元(きょ・かげん)十段や小池芳弘六段、張瑞傑(ちょう・ずいけつ)四段らと切磋琢磨(せっさたくま)していった。台湾から来日し、自らより後に入門した3歳下の許十段には言葉も教えたのに、プロ入りは先を越された。許十段から1年遅れて平成26年に入段するが、タイトル戦への道のりは遠かった。「院生になったのも、プロになったのも遅い。中学生でプロ入りした棋士と自分では、ステージが違うので焦りのようなものはなかった」と自らを冷静にみる。ただタイトル戦では頻繁に記録係を務め、棋譜付けや秒読みなどの安定した対応は、トップ棋士の信頼が厚い。そこでの学びやAI(人工知能)ソフトを取り入れた研究で、実力をつけてきた。記録係として報道陣が多い場も経験してきた。今回は相手が上野女流棋聖のため注目されていることを承知で「そういう場で打てるのはうれしかった」と屈託がない。7人の話を同時に聞いたとされる聖徳太子のように、「よく人の話を聞けるような人になってほしい」の願いを込め名付けられた是聞三段。「人の話を聞かないのが欠点。人にアドバイスされても、納得しないとハイ≠ニは言わない」とおどけてみせるが、終局後の報道陣の質問に30分近く、丁寧に答え続けた新人王。「(棋聖戦など)リーグ戦に入るような活躍ができれば」と将来を見据えた。(伊藤洋一)


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