藤沢里菜五段、上野愛咲美四段、十段戦本戦に登場 女性初の勝利目指す |
【2021年10月27日(水) 産経新聞】 囲碁の「大和ハウス杯 第60期十段戦」(産経新聞社主催)本戦トーナメントに28日、藤沢里菜女流本因坊(23)=五段=が、11月には上野愛咲美(あさみ)女流棋聖(20)=四段=が登場する。十段戦史上、本戦入りした女性棋士は小林泉美七段(44)のみ。20人による本戦入りを決めた2人は、女性初の本戦勝利を目指す。許家元(きょかげん)十段(23)との五番勝負に挑む対局者を決めるトーナメントには、約460人の棋士が出場。藤沢女流本因坊と上野女流棋聖は予選でともに3連勝して、本戦入りを決めた。圧巻だったのは藤沢女流本因坊。9月23日に行われた最終予選では、七大タイトルホルダーの一力遼天元(24)を破ったからだ。「(一力天元が)投了されたときは、何が起こったんだろうと…」と対局後に興奮ぎみだったのも当然のこと。トップクラスの実力を持つ一力天元相手に勝利したのは、4戦目で初めてだった。「本戦だとか、予選のどの段階だとか、気にせず打っている」という上野女流棋聖も、先輩男性棋士を破って本戦入りを果たした。「藤沢さんも上野さんも、自分が女性だから実力が劣っている−という意識はないと思う」と話すのは青木喜久代八段(53)だ。通算669勝のうち、対男性に346勝(372敗)と日本棋院所属の女性棋士で最も多く勝っている。女流タイトル通算11期もさることながら、平成9年には男女混合の若手棋戦、新人王戦で準優勝の実績を持つ。ただ七大タイトルの予選を突破することはできなかった。仲間数人、もしくは数十人が集まって練習対局したり、実際の対局で出現した局面の善悪を検討したりする研究会は、今でこそ男女が一緒に行うのは当たり前。ただ青木八段が20代の頃は「女性は弱いから、一緒にやっても勉強にならない≠ニ遠ざけられている感じだった」と振り返る。プロになるための試験は男女合同が基本。女流本因坊戦など女性限定の棋戦があるため対局数は多くなるが、ここでの勝敗は昇段する際にカウントされない。よって七大タイトル戦などで勝つことが、自らの実力=段位を示す一つの道になる。藤沢女流本因坊は昨年、30歳以下・七段以下による若鯉戦で優勝。女性が男女混合棋戦を制するのは初の快挙だった。男性棋士には158勝123敗の勝率.562と勝ち越している。上野女流棋聖は10月15日に決着した新人王戦三番勝負で、外柳是聞(せぶん)三段(26)に敗れ女性初の新人王を逃したが、1勝をあげることはできた。対男性に86勝68敗の.558と藤沢女流本因坊に迫る勝率だ。男性優位の見えないガラスの天井を破ることができるか。藤沢女流本因坊と上野女流棋聖の活躍が注目される。(伊藤洋一)
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