一力遼棋聖ゆかりの碁会所、コロナで36年の歴史に幕 仙台 |
【2022年4月30日(土) 河北新報】 仙台市青葉区本町の碁会所「仙台本町囲碁倶楽部(くらぶ)」が6月末、36年の歴史に幕を下ろす。新型コロナウイルスの影響で対面での対局が敬遠され、利用者が大きく落ち込んだためだ。プロ棋士の一力遼棋聖(24)=仙台市出身=が幼少期に腕を磨いたゆかりの場所でもあり、関係者から惜しむ声が上がっている。「この囲碁倶楽部は自分の原点。皆さんの応援のおかげでタイトルを取れた」。一力棋聖は2020年11月、倶楽部を訪れ、七大タイトルの一つ「碁聖」の初獲得を報告した。地元関係者らは「囲碁界のトップになってほしい」「多くの会員が小さい時の姿を見ている。仙台で会えて本当にうれしい」と歓迎。期待通り囲碁界の頂点にまで上り詰めた。倶楽部に残る大会記録によると、一力棋聖は仙台市片平丁小1年だった05年1月、月例大会にアマチュア三段で出場して優勝。翌月は四段で頂点に立ち、4月には五段で準優勝、5月は五段で優勝と快進撃を続けた。その年の6月にあった河北少年少女囲碁大会選抜戦小学生の部で優勝し、小2ながら宮城県代表として全国大会に出場している。同年10月から日本棋院のプロ候補生「院生」になり、10年6月、プロ採用試験に合格した。「県内からプロ棋士が生まれるのは名誉なこと。他にもトップアマが出ている。すごいことだ」。倶楽部で21年8月までの11年間、席亭を務めた門田正則さん(65)は目を細める。
■県内囲碁ファンの拠点「行き場失う」
倶楽部は1986年9月に開業した。日本棋院県囲碁連盟の事務局を担い、公式戦などの大会運営を手がけてきた。河北新報社主催の河北少年少女囲碁大会や河北新春囲碁大会などの会場としても親しまれた。席数は約120席で、多くの囲碁愛好会が活動拠点としてきた。月例大会には100人前後の腕自慢が集まり、白熱した盤上の戦いを繰り広げた。定年退職者らを対象にした入門教室も開かれ、囲碁ファンの裾野を広げる普及活動にも力を入れてきた。門田さんによると、最盛期には1日100人以上が訪れたが、新型コロナ下で急減。くしゃみなどの飛沫(ひまつ)を防ぐ間仕切りを碁盤の間に立てるなど感染対策を徹底したものの、1日の利用者が数人という日もあり、運営会社が閉所を決断した。門田さんは「倶楽部を守りたかったが、コロナには勝てない。悔しくて仕方がない」と肩を落とす。3月末には市中心部にあった別の碁会所「仙台囲碁センター」(青葉区)が看板を下ろしたこともあって「囲碁ファンが行き場を失ってしまう」と憂慮する。
| |