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「人生いつからでもやり直しがきく。だから今、好きなことを目一杯」世界最年少プロ棋士・藤田怜央の父に聞く、子どもの「好き」
【2023年1月15日(日) たまひよONLINE
大阪市に住む小学3年生、藤田怜央くんは、2022年9月に9才4カ月で世界最年少プロ棋士になり話題となっています。天才棋士を育てるパパの藤田陽彦さんは理学療法士として療育の仕事にもかかわっているのだとか。藤田さんに、子どもが熱中するほど好きなことの見つけ方や、その力の伸ばし方について聞きました。

2人のパパとしての子育て経験を療育にいかす
――藤田さんは理学療法士として、放課後等デイサービス・児童発達支援もされているそうです。療育のお仕事に携わるきっかけを教えてください。

藤田 怜央には3才年上の兄・夏輝がいます。長男は、体の動きが少し弱いところがあり、4才ころから療育に通っていました。私はもともと理学療法士として鍼灸院を営んでいますが、長男の療育に通う中で相談員の方にすすめられ、自分でも放課後等デイサービス・児童発達支援など、学校に行くことができない子どもたちのサポートを始めることに。

理学療法士は、身体に障害のある子どもや、体の動きにぎこちなさがある子どもに対して、日常生活関連動作や運動機能の向上を目指してサポートする役割もあります。また、長男の子育てを通して学ぶこともたくさんありました。その経験を、ほかの子どもたちの療育でもいかせたらと思い、2015年、長男が5才のころから「からだ-のう-こころ研究所Kids support」を始めました。現在は30〜40人くらいの子どもたちの支援をしています。

――児童発達支援をしている中で、最近の子どもたちの育ちで課題だと感じることはありますか? 

藤田 全体的に見て、我慢する力や継続する力が弱くなってきているのかなと感じます。興味を持ってやってみたことも、できないとすぐあきらめてしまうような…。1人1人の個性によってサポートのしかたは違いますが、子どもが興味を持って始めたことがあれば、根気よくもう1回やってみよう、と声かけをするようにしています。それで、その子が熱中できるほど好きなことを見つけることができるヒントになればいいな、と思っています。

好きなことを見つけることが、その子の強みになる
――児童発達支援の仕事を通じて、子どもが好きなことを見つけたことで成長を実感した経験はありますか? 

藤田 そうですね…、お母さんが手がつけられないくらい荒れていた低学年の子どもが、私の事業所で自分の好きなことを見つけられたことで穏やかになる、というケースは何度も目にしています。子どもは楽しいことに没頭したり、エネルギーを発散できるものが見つかると、心が落ち着くことが多いように思います。

社会的な風潮として、学力をつけることを重視する傾向があると思いますし、親としても、好きなことと同時に勉強の力も伸ばしてほしいと思いますよね。だけど、子どもが何か一つのことを一生懸命に取り組んでいたら、ほかのことは多少目をつぶってもいいんじゃないかな、と思うんです。好きなことに熱中できることは、その子の強みになりますし、生きる力の源になるんじゃないかと思います。

子どもが虫が好きなら一緒に虫取りに行ってみるとか、ボードゲームが好きなら一緒に対戦してあげるとか、親も一緒に楽しめるといいですよね。
自分の子育てに関しても、子どもが興味を持って続けられるような何かを見つけてあげたいなと思っています。

――これまでの藤田さん自身の子育てでは、子どもの好きなことを見つけるためにどんなことをしてきましたか? 

藤田 これまで、柔道、自転車のBMX、楽器のハープ、テニス、卓球、サッカーなど、子どもが興味を持ったいろんな習いごとにチャレンジしました。1回始めた習いごとは半年くらいやってみて、続けるかどうかを決めています。
きょうだいでさまざまなことにチャレンジした中で、怜央は囲碁に熱中しプロ棋士になるほどに上達してきました。
夏輝は今も続いている習いごとは囲碁と歌ですね。怜央とは違う、夏輝なりのペースで楽しんで取り組んでいます。

きょうだいそれぞれの個性を大切にしたい
――きょうだい仲はいいですか? 

藤田 めちゃくちゃ仲よしで、いつも2人で遊んでいますね。夏輝はとっても優しくて怜央のいうことはなんでも聞いてあげるから、怜央はお兄ちゃんのことが大好きです。月曜の夜は息子2人と僕とで銭湯に行くんですが、露天ぶろのテレビを見ながら、2人でずっとおしゃべりしています。きょうだいが仲よくいてくれることはとてもうれしいですね。

――夏輝くんと怜央くん、それぞれ違う個性があると思いますが、接し方は異なったりするのでしょうか? 

藤田 お兄ちゃんだから、弟だからと分けずに、食事・運動・睡眠など、同じように育てています。それはどこの家庭も一緒じゃないでしょうか。差をつけたり特別なことをせず、同じように育てることも大事だと思っています。

ただもちろん、それぞれの個性も好みも違います。怜央は動物が好きなので、家族で動物園に行ってハシビロコウを見て喜んでいますが、夏輝はあんまり興味を示さないですね。一方で夏輝は電車が好きなので、ただじっと電車を見つめて楽しんでいたりします。子どもが好きなことに集中している姿は見逃さないようにしています。

わが家は妻と一緒に自営業をしていて時間の都合がつけやすいので、日常的な運動は親子で一緒に行っています。怜央とは散歩や卓球をして体を動かしていますし、夏輝は体幹が弱いので、最近は一緒に初動負荷トレーニングというのをやっています。イチロー選手が実践していることでも有名なトレーニングで、親子でジムに通って一緒に鍛えています。
人生はいつからでもやり直しがきくもの。だからこそ子どもが今好きなことを目一杯やらせてあげたい、と考えています。

藤田さん自身は、小学生から大学生までアルペンスキーに取り組み、国体・インターハイ出場の実力を持ち、大学卒業後に専門学校に通い、理学療法士の資格を取得した経験があります。「できるだけ親子で一緒にいろんなことにチャレンジして、親も楽しみながら、柔軟に子育てをしていきたいと考えています」と話します。

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

藤田陽彦さん
PROFILE
理学療法士、鍼灸師。大阪市中央区でふじた鍼灸接骨院の院長をつとめる。
2015年には放課後等デイサービス・児童発達支援の「からだ-のう-こころ研究所 kids support」を開設。困りごとを抱える子どもたちをサポートする活動を行っている。


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